インド音楽を演奏している人たちはステージでなにをやっているの?
本場インドでインド古典音楽のコンサートに行くと演奏を聴きながら、周りの人たちがひたすら数えるような仕草をしていたり
奏者もお客さんもみんな同じタイミングで手や膝を打ったり
「キャバッ!」「キャーバーテー」と叫んでいたりしています。
あれって何なの?って思った方に向けた記事です。
インド音楽を楽しむための5つのポイントを解説します
一曲がやたらと長くて(1、2時間、続くことも)眠くなったり、なんだか凄いのは分かるけど、何をどう楽しんだらいいのかわからない! から解放されましょう。
タブラプレイヤーの視点から、インド音楽を楽しむためのポイントを解説
まずはこちらの資料をチェック。
#1 タブラの楽譜
タブラの楽譜は、独特の音(=Bol ボル)で表します。 Dha ダ/Dhin ディン/Tin ティン/Ge ゲなどがあります。それぞれ、タブラの左右・両方のうちどれを叩くか、叩く位置、指使いを示しています。
タブラソロでは、このボルを組み合わせたタブラの曲をプレイヤーが暗唱します。
慣れてくると、ボルを聞いただけでその通りにタブラが叩けるようになり
また逆に、タブラを聴けばなにを叩いているのか、そのボルが分かるようになります。
師匠が
「じゃあ今日は
Dha Ti Gu Ge Ta Gu Dhi Nu Dhi Na Ge Neって叩いて」
と、いきなり、しかも超早口で振ってきても大丈夫!
即座に言われた通りにタブラを叩けます。
タブラ奏者の家に遊びに行くと、いきなり難問を振られます。
大丈夫!
#2 タブラの16ビート
タブラの主要なビートは、西洋音楽で言うところの4拍✕4小節の16ビートです。Teentaaal ティンタールと呼ばれています。× Dha Dhin Dhin Dha |
2 Dha Dhin Dhin Dha |
0 Na Tin Tin Na |
3 Tete Dhin Dhin Dha |
× Dha ||
× ダー ディン ディン ダ |
2 ダー ディン ディン ダ |
0 ナー ティン ティン ナ |
3 テテ ディン ディン ダ |
× ダ ||
と読みます。
#3 ビートのサイクルとSam サム
タブラのビートは、1サイクルごとに円を描くように進行していきます。1拍目(=Sam サム)に重点が置かれ、強調して演奏されます。
これ!重要!
北インド古典、ヒンドゥスタニは、ほとんどすべてがタブラの伴奏に合わせて演奏されます。
なので歌やシタール、サロード、バンスリなどなど、プレイヤー達は皆このタブラのサイクルを理解しています。
#2で、一番最後の× Dha ||、つまり17拍目(=次のサイクルの1拍目)が余分に書かれているのはこのルールがあるから。
タブラに合わせて、ステージの全員がこのサムに向かって戻ってこられるように、インプロやフレーズをキメます。
#4 タブラソロの伴奏
タブラソロでは、1サイクルごとに固定されたメロディ(=Lehra レヘラ/Nagma ナグマ)を伴奏に使用します。タブラをこのメロディの基音に合わせて、チューニングします。前述のサムに、伴奏の基音とチューニングされたタブラの音を重ねます。
このような表現が、インド音楽の美学のひとつです。
ナグマの演奏の仕方はこちら
このメロディのループ上で、ソロを演奏します。
#5 Tihaai ティハイ
同じパターンを3回繰り返すコンポジションがよく出てきます(=Tihaai ティハイ)。例えば、11拍のパターンを作り、それを3回繰り返すと合計33拍になります。最後の1拍を、次のサイクルの最初の1拍目として終わらせるので、1を引きます。
最終的に32拍、16ビートの2サイクルとなります。図Aを参考に数えてみてください。プレイヤーは、こうした数の遊びを即興で演奏します。
ティンタール(16ビート)のティハイの例
11✕3=33 33-1=32 →16ビートを2サイクル
ここは難しいと言われるところ!ちょっとした算数をやっています。
もっと短い例だと、4ビートに合うサイクルを作りたいときは、3拍のパターンを3回繰り返します。
タブラのフレーズじゃないんですが
例えば仮に、トマト(3拍)を3回。
トマトトマトトマト 3✕3=9 9-1=8 →4ビートを2サイクル
最後のトが次のサイクルの最初の1拍目に合わさって消える、と考えるので
トマトトマトトマまでが4ビートを2サイクルで完結、と考えます。
キャバ=キャバクラじゃありません
最後に「キャバッ!」「キャーバーテー」と叫んでいたりしているのは何なのか?について解説。インドでは、演奏中の奏者から良いアドリブが出たり、素敵なフレーズを弾いたり歌ったり、#5で説明したサイクルがキマってきちんとサムに戻ってきたとき
手や膝を打ったり、お客さんが「Kyabaat!(キャバッ!)」と掛け声をかけます。
ヒンディ語です。
英語に直訳すると「What are you talking about?!」
キレ気味、喧嘩のときにも使う言葉です。
日本語にすると、「なんだと?!」 という感じですが
意味が転じて
なんだと?!何て言った?!良くわからない(喧嘩腰)
↓↓↓
もう、何?良くわからないくらいすごい!(称賛)
となります。
誰かが良い発言をした時、良いパフォーマンスしたときに褒め言葉としても使うんです。
まったく逆の意味があるのが面白いですよね。
ノリとしては「Bravo!」とか
日本語なら「ヤバい!」とかいう感じと思っていただければ。
ヤバいも、良い意味と悪い意味、両方ありますよね。
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